「フロム・ヘル」
アラン・ムーア作、エディ・キャンベル画のグラフィック・ノヴェル。いや~、ものすごい緊迫感&重量感
。
わたくし、ホラーが全然ダメなので(文字だけなら許容範囲内なんだけどぉ
)、書店でビニ本状態になってたこの本の前で、すごい長い時間逡巡したのよね
。コミックスだって聞いてたから、まさかこんな大型本だと思ってなくて「げっ
ひょっとして血みどろシーンも大型化ッ
」コワすぎーッ
ってな内心の怯えを凌駕したのは、裏表紙の宣伝文。「本作が再現を試みているのはむしろ、ヴィクトリア朝末期の英国社会である。」これに負けて、学生時代以来ン十年ぶりに
みすず書房の本を買っちまいました
。
そしてこの宣伝文には偽りなしものすごく面白かったー
。ヴィクトリア朝末期社会(特に底辺の)だけじゃなく、このテのものにはつきものの「フリーメーソン」
についても、知識欲をガンガン刺激してくれる
。「フリーメーソン」については、敬愛するモーツァルト
が会員だったと言われてるし、ヨーロッパの文化はキリスト教とともにこのあたりの知識なしには本当には理解できないから、これまでも何度となく関連書
を読んでみてはいるんだけど、やっぱビシッ
とは理解できないのよね~
。
ま、それはそれとして、内心ビビりながらソロリソロリページをめくってみると、意外や意外ダイジョブでした
。絵柄が、日本のコミックスと違ってザツ、もといアーティスティック
だからだわね。まさにヴィクトリア朝の「パンチ」の風刺画の後継ってカンジ?でもこの黒が勝った適度にデフォルメ&オミットされていながら高密度
な印象を与える絵柄が物語の性格をかなりな程度決定づけてるわけです
。
内容的には、切り裂きジャックの正体について、スティーブン・ナイトの「切り裂きジャック最終結論」を元にオリジナルのアイディアを付け加えて事件を再構成したもの。犯罪者が見る幻覚のビジョンがこれまたスゴいのよー。その驚愕のイマジネーションは二人の非凡な才能
ががっぷり四つでスパークしてる
カンジ(?)。特に最後の犯行時の、狂気を超えた確信ともいえるビジョンには、理性での理解とかいう前に、ただただ圧倒されるばかり
。
たぶんこの作品、ちょっとばかしの気の重さを覚えつつ、これから何度となく読み返さざるを得ない底なし沼なんだろうなぁ、なんて思うものです
。
| 固定リンク
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 「うちの猫がまた変なことしてる。」1~3巻(2018.01.31)
- 「ポーの一族 春の夢」(2017.12.17)
- 「ベルサイユのばら エピソード編2」(2017.09.02)
- 「文鳥様と私 1~2」(2013.05.08)
- 「幻月楼奇譚」(2013.03.28)
コメント