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2010/03/06

「仮想儀礼」

篠田節子さんの2008年12月刊の単行本book。いやはや、これまたスゴい展開の作品だったわ~sweat01


篠田さんは昔から好きな作家のひとりでheart04、最初の出世作「絹の変容」から、モチロン全部じゃないけど、割と飽きっぽいわたくしが長々とおつきあいさせてもらってる希少な作家さんのうちのひとりですhappy01。直木賞受賞の「女たちのジハード」も面白かったけど、一番好きなのはやっぱ「ハルモニア」かな~note


というわけでこれは、篠田さんの数あるテーマのうちのひとつ、「宗教」の系列に連なる作品。ここに出てくる新興宗教の教祖・鈴木正彦(本名)は、ゲーム本執筆のため付け焼刃で勉強したチベット仏教の断片をツギハギして、金モウケのためにネット上でバーチャル宗教を始めたニセ教祖。それが、リアル化したとたん怒涛の勢いで、正彦の思惑とはかけ離れた制御不能のシロモノとなっていく過程が、篠田さんの持ち味の、平易な言葉を使いながら重量を感じさせる緊密な文章によってテンポよく描かれてますpen


教祖・正彦は、アタマのいい常識人。だけど実は人一倍誠実な甘チャンだったりするのよね~secret。そのせいで後半、破滅に突き進んで行かざるを得なくなってくんだけど、追い詰められた切ないロードムービー風movieになっていてラスト、大悲劇になったりしたらわたくし的には最も好きなパターンだったんだけど、さすが篠田さん、なかなか策士的なラストを用意してましたthink


自ら書いたゲームブックのツギハギ似非宗教が、現実の世界に与えてしまった深刻な影響に底知れぬ恐怖を覚えた正彦が、破滅的な“巡礼の旅”の最後に、常に共にあった「共同経営者」矢口(これがまたいいキャラなのよね~good)の死を体験することによって、宗教というものの真の意義に気づく。彼は最終的に、「現実世界」での責任をきっちり取ったんだけど、果たしてその「現実世界」ってのは、“まとも”なものなんだろうか、っていう疑問が最後にフツフツと湧いてくるのね(もちろん犯罪行為はゼッタイダメngだけど)。篠田さんの言いたかったことはこれじゃないかとthink


例のカルト教団の事件や「9・11」の後の世界をベースにして、現代日本の「生きづらい系」若者、ブームというものにあっという間に踊らされる衆人、違和感を感じたものには徹底的な攻撃を加える不寛容さ、圧力には脆い“第4の権力”マスコミ、弱者を食い物にする貧困ビジネス、そしていつの時代にも変わらず存在する人間の欲望やらなんやらドロドロしたものを、実にうまく描いてると思うcrown


わたくし、この本を読んでて“ハッ”っとした一文がありましたcoldsweats02。下巻210ページ目。『女は怖い、と言った先輩が昔、役所にいた。本人はまったく嘘をついている自覚がないまま、思い込みの世界で物を言うから、額面通り受け取るとひどい目に遭う、と彼は、新人時代の正彦に忠告した。』篠田さん、スルドすぎthunder。女は怖い…weep

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