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2010/05/16

「弥勒」

篠田節子さんの1998年の作品book。こないだ久しぶりに篠田さんの新作を読んだら、「篠田味restaurant」を思い出しちゃって、長いこと本棚に死蔵してた652ページ、厚さにして3センチの文庫を取り出したのでしたon


「人が生きるということは、殺すことだ。果たしてそこに、どんな救いがあるのか?」っていうものすごい深淵なテーマを、これまたものすごい強靭な精神力で描いた作品diamond。篠田さんの小説って、緻密な構成と説得力のある筆力、不自然な妥協をすることのない潔さ、人間の心理の奥底を覗き込む冷徹な視線、ほんとにわたくし、感服いたしますconfident


新聞社で美術展artを担当する事業部員の永岡が、美しい仏教美術shineを擁するヒマラヤ山麓の王国パスキムの政変に巻き込まれ(ってか自ら飛び込んで)、地獄を生きるハメになるんだけど、自分の価値観がすべてぶっ壊されたimpact後、彼はどう生きていくのか。


この永岡ってのが、日本ではかなり独善的な唯美主義の、いわゆる“文化人”的な(もちろん、ヤラシい意味gawkでの)キャラ。マスコミの人間にありがちなタイプだわねdown。表層的な知識しか持ってないくせに「無知な民衆に本当の価値を教えてやる」的なpig。でも、極限状態に置かれれば、人間、だいたい似たような行動に出るだろうから、彼のいかにも日本人的なアマちゃんでヘナチョコな行動を篠田さんは徹底的に冷徹に描くpen。きっとわたくしも間違いなく同様。イヤ、その前に飢えと疲労で死んでるかcoldsweats01


クーデターによる完全平等社会の建設が失敗し、崩壊していく経緯も驚異的な想像力で編み出し、密度の高い描写による”地獄模様typhoonエピソード”の積み重ねで、ラストの「救い」の意味が生きてくるようになってるのね。3センチの厚みが、腹の底から湧いてくるようなラストの感動を生み出すのwave。わたくし、ボール紙で作られたチョルテン(携帯式仏龕<ぶつがん>)のエピソードにはほんと、泣きましたweep。永岡がこの地獄に転落するきっかけとなった、世にも美しい弥勒仏がどんどん重たく感じられてくるのがとてつもなく象徴的で、ブツ好きなわたくしには衝撃的impactながらも、納得の展開でしたfull


あぁ、ますます篠田さん、ホントにスゴいthunderデスgood

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