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2011/11/15

「誰か助けて 止まらない児童虐待」

ノンフィクションライター、石川結貴氏の児童虐待の現場を取材した著作book。著者の、児童虐待問題に対するやりきれない思いと閉塞感が全編にあふれ、読んでいると息苦しくなる一冊weep


実は20年近く前、わたくしが住んでいたマンションの同じフロアで、もしかするとあれは虐待だったのではないか、と思われる出来事が長期に渉ってありました。その頃はまだこれほど児童虐待が社会問題化しておらず、わたくしの意識としても、あの家庭はちょっとおかしいのではないか、と思う程度だったのです。でもある日、そこのこどもが亡くなったことを知りました。それがわたくしの中では後悔の種としてあり続けているのです、あの時どこかに通報しておけば良かったのではなかったか、と。


そんな思いから、わたくしはこの本を手にしました。ここでは、我が子を死なせた母親、虐待が疑われる子供を預かる保育園、小学校、世間では全く役に立っていないのではないかと思われている児童相談所、児童福祉司などへの丁寧な取材の結果が綴られています。それぞれの立場でみんな「誰か助けて」と叫んでいる。ここに登場する、取材を受けて文章になることを承諾した方々はおそらくまだ「まし」な方なのではないかと思うけれど、それでも、どの方面から見ても今の状況は八方塞がり、というカンジなのがわかりました。


しかし、問題を解決に向かわせるヒントがないわけではない、ということにも気づかされます。この著作ではそこまで触れられていないけれど(というか、そこまで考えを至らせる余裕がなかったと言うべきか)、現在、子供を虐待から救おうとするとき、壁になっているものの幾つかは法律を変えることで達成出来る可能性があります。いったい何のために政治家がいるのか。ただバカみたいに選挙と権力闘争をするためなのか?


この本で残念なのは、現在の法律とその運用を金科玉条のように絶対に動かせないものとして前提されていること。法律は変えられる。自衛隊が海外で武力を振るえるようにしようという法律はどんどん出来ているのに、国の中で将来を担う子供たちを見殺しにする法律はそのまま。所詮、金にならない分野は政治家も官僚もムシ、ということなのか?


それと、せっかくいい前例としてアメリカ・カリフォルニア州の制度を紹介しているのだから、なぜ日本で同様なことが出来ないのか、ぜひそこまで突っ込んで欲しかった。それが出来ない日本の障害はどこにあるのか?それがわかれば、またひとつ考えるヒントになるかも知れません。


石川さんにはさらにそのあたり取材をしていただいて、ぜひわたくしに教えてください。

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