「リアル・シンデレラ」
姫野カオルコさん著。なかなか味わい深い小説ですねぇ
。
姫野さんは、わたくしが敬愛する評論家・斎藤美奈子さんがいつも好意的に取り上げる作家さんだったので、何か読んでみようと常々思ってました。
まず、“掴み”が魅力的
。小さな編集プロダクションで働く女性ライターが、童話を読みなおして翻案し大人向けのムック本を出版する企画のために「シンデレラ」を再読するところから始まるのね。で、このハナシ、全然主人公が目立たないっ
ってところから始まって、そもそもこのシンデレラは幸せなのかっ
ってなコトになって、本当に幸せな人生というのは、ある名もなき女性、倉島泉(くらしません)みたいな生き方なのだ
という社長、矢作の思いつきにより、取材
が始まる…と。
倉島泉を取り巻く多くの人たちへのインタビューと語りで、多方面から彼女を描き出していくっていう流れなんだけど、ある一方向へ流れていったかと思うと、ひとりのたったワンワード、ワンセンテンス、ワンフレーズで泉の印象がキラキラッ
と180度ひっくり変える
瞬間があって、その手並みの鮮やか
たるやタメイキもの
。一気にシアワセ感満載
。
斎藤さんが『語り手が随所で茶々を入れるのも姫野作品の特徴である。』と言及されている部分も、おおーこれかー、と堪能。それって人生の真理
だよな、ってつい苦笑しちゃう
鋭い批評精神が顔を出す。うん、確かにクセになる
。
さて、童話のシンデレラは、意地悪な継母や義理の姉たちと実は価値観を同一にしている娘で、“仕返し”のお話だったけれど、倉島泉は“他人の幸せが自分の幸せ”と感じられるようにと妖精みたいなもんにお願いした、というお話でした
。
しかし本筋とは別に、この泉さん、今年62歳におなりになるヒトなんだけど、娘時代のハナシとかなんだかものすごーく昔くさいカンジがする
。40~50年前の日本って、まだまだ貧しかったんですね…
。
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