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2013/01/18

「光線」

村田喜代子氏著book。昨年の東日本大震災と自身の癌治療のための放射線治療の体験とを経た後、それ以前に編集者から提案されていた「土地の力、地の霊力」というテーマに沿って書かれた連作短編集。わたくし、ココロの深いところにグッと来ましたpunch


ここには8編の短編が収められているんだけど、大きく二つの題材があって、ひとつは編集者から提案のあった「土地の力、地の霊力」、もうひとつは「原子力」。いろんなレベルでそれが描かれてます。どちらも真の意味で人間の力は及び得ないエリアなんだけど、そこにヒトはどんな意味を見いだすのか、っていう非常に深遠な問いがあるのねdiamond


「土地の力、地の霊力」では、身近な出来事から神話や宇宙の神秘、人間のありよう、そして自身の存在の不確かさに思いを致す。「原子力」では、作家自身の経験を通した想いが色濃く反映されている。


なぜ自分が病魔に侵されなければならないのか、蜃気楼が現れる日に居合わせるかどうかの違いはなにか、なぜ原爆は長崎に落とされたのか、大津波に襲われて生死を分けたものはなにか、原発事故の被害の範囲はなぜ切り分けられるのか…。そこには、透明な諦念みたいなものが横たわっている。


だけど、そんな諦念の中にあっても、ヒトは生きる。宇宙の神秘のひとつ、地球の上で、その脅威におののきながら、生きるのだ。最後に収められた「楽園」は、そんな人間のひとりの生き方を描いて圧巻なのでしたtyphoon。闇に閉ざされるケイブ・ダイバー(洞窟潜水士)を題材にした息詰まるような作品なんだけど、これを読んだ後、ごく普通の日常であろうとも自分を取り巻く世界を見る目が変わるような気がするflair


村田さんは初読だったけど、静謐な雰囲気を湛えたヒジョーに内省的な作風なんですねshine。やっぱ芥川賞作家さん。でも読みやすいですheart02

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