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2013/03/01

「抑圧された記憶の神話」

原書は1994年、日本では2000年に第1刷が翻訳出版された「抑圧された記憶」に関する一般向けのノンフィクションbook。E・F・ロフタス氏とK・ケッチャム氏著。仲真紀子氏訳。サブタイトルは「偽りの性的虐待の記憶をめぐって」。


原著者に関するプロフィールが一切掲載されてないんだけど…think。本文中からは、記憶に関する研究を長年重ねている有名な心理学の研究者のようです。「冤罪と裁判」の中で、記憶とはいかに変容しやすいものか、これを参照いたされたい、と書かれてたので読んでみましたdash


原書が出版された頃くらいにわたくし、「24人のビリー・ミリガン」という多重人格をテーマにした小説を読んで衝撃impactを受けたんだけど、その小説で、アメリカでは子供の頃に激しい虐待を受けると、人格が破壊されその後の人生に重大な影響を与えると考えられる、ということを初めて知りました。まさにそのころ、アメリカでは、行きすぎた「記憶の回復」問題が論争されてたんですね。


つまり、現在心に問題があると、その原因はすべて子供のころの虐待が原因だとされ、その記憶がなくても「思い出す」ようカウンセラーから暗示、誘導される。しかしそれが「作られた記憶」だとしたら大変なことである、と警鐘をならしているのが著者のロフタスさんなわけです。


洋画movieなんかを見てるとよくカウンセリングの場面がでてきて、アメリカ人ってなんでこんなにカウンセリングばっかしてるんだろう、なんて思ってたけど、そのカウンセリングでこんな極端なことまで起こっていたとは…wobbly。「回復された記憶」の内容が「悪魔の儀式で乳児を何人も殺すのに参加させられた」とか…。そんな記憶を元にして、家族は訴えられるというケースがアメリカでは何百と起こったらしい。


ロフタスさんが何度も書いているように、あくまでこれは「記憶」を問題にしているはずなのに、「性的被害者をむち打つものだ」とか「おまえは女性のくせに父権主義者なのか」とか「これまでのフェミニズムの成果を全部ひっくり返すのか」とか、イデオロギーの問題へとスライドして論争に巻き込まれていく様子も克明に書かれてます。あと問題を複雑にしている要因にやっぱり宗教があると思うのよね~。このあたりはわたくし、よくわかんないtyphoon


記憶の研究者として「記憶とは、いろいろな影響を受けて変容しやすものだ。相談者が「回復した記憶」が事実なのかどうか、客観的な証拠を求めなければならない。」と主張する。科学者としては全うな姿勢ですdiamond。「偽りかもしれない記憶」によって訴えられ崩壊した家族が実際に何百とあるからだ。それに対して多くの臨床家たちが主張するのは、「性的虐待者は抑圧された記憶を回復することによって癒される。その記憶を否定することは、彼らを否定することに等しい。記憶が事実かどうかは関係ない」と。どこまで行っても議論は平行線、の典型なのよねbearing


人間の記憶がいかにあいまいなものであるかは、わたくしも仕事上いやというほど経験してるけどcoldsweats01、世の中にはそう思わない人が結構いるわけで、訳者の仲さんがあとがきで指摘していることはとても重要だと思います。『「何かがあるはずだ」とか「思い出せば問題は解決される」といった信念が思い出すことへの動機を高め、誘導を受け入れやすくする。このような信念や動機が作られることが抑圧された記憶の大きな問題だろう。信念を扱った研究は、今後の課題である。


わたくしなんか、まったく自分の記憶に自信がないけどなぁ~coldsweats01。子供のころの記憶なんかひとっつもないってのが自慢だしup。あれ、もしかして全部「抑圧された記憶」?…うぎゃーッbearingimpactsign01

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