「東京島」
桐野夏生さん著。桐野さんの作品はわたくしあまり好みではないんだけど
、ベストセラーにもなったしってんで文庫になったのを買ったまま放置してあったのをやおら取り出してみました。これって、ブラック&シニカルコメディものとして読んでいいのよね
?筒井康隆氏ほどのドトーの突き抜け感
は当然ないけど、まぁ傾向は近いっていう。
無人島に流れついた男31人の中に女
が1人っつー、どーしたってエロゲロ
な展開を頭に浮かべてしまう設定なのにもかかわらず、桐野さん特有の乾燥した筆致が、今の日本人の無味乾燥で自分以外の人間には無関心なありようをうまく掬ってるカンジがする
。
聞くところによると、戦中に実際に起こった事件を下敷きにしてるそうで、現実では本当にひとりの女性を巡って男たちの中でガツガツ殺し合いがあったとか。昔のウェットな日本人だとそういうことになるんだけど、現代のパサパサした日本人だとこーゆー風になるんじゃないか、と。なるほどー
。
しっかしトーカイムラに押し遣られたワタナベさん、ほんとーにケッサクでわたくし何度も大笑いしちゃった。ま、知り合いにはなりたくないけど
。だけど「女の代表」が清子さんってのがどーにも…
。桐野さんの好きそうなキャラだし、ひとり残された女が“40代のデブ”っていう設定にもイヂワルな目線とチャレンジングな精神があってオモシロいんだけどねー
。それともこれは、いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」の一環ってことなのかしらね
。
これまで(ってかわたくしそんなに読んではいないけど)桐野作品は、重たいドシリアスなもの(「アウト」を読んだ時は衝撃的だったけど)が多くて、冒頭に書いたようにわたくしは好きじゃないんだけど、このシニカル&シュールなファンタジックコメディ調は好きかも。本人はそういうつもりで書いたんじゃないかも知れないけどね。今後は“女版筒井康隆”で新境地を開いていってほしいなぁ~
。
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