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2014/08/27

「翻訳がつくる日本語」

関東学院大学教授、言語学博士、中村桃子氏著book。自家撞着を起こしてるヘンな本typhoon。サブタイトル「ヒロインは「女ことば」を話し続ける」。


このサブタイトルは、洋画の字幕や吹替え、あるいは小説の翻訳などで、非日本人のヒロインは、どんなマッチョな女性であっても「女ことば」を話している、ってことを言ってるのね。で、それが、実際の日本語にどんな影響を与えているのか、を論証する本、ってことになってるんだけど、そもそもの土台のところの前提が混乱してるのよねーbearing


近代の日本語の言行一致は、幕末から明治にかけて西洋文学を翻訳するあたりから始まったわけだけど、外国の若い女性の会話を訳すとき、翻訳家たちはどんなコトバを当てるべきか困った末、当時一部の女子学生たちvirgoが使い始めた「てよだわ」言葉を使うことにした。それが、日本の小説に登場する女学生にも使われることによって、広く使われるようになった(P146~147)。つまりこの時代では、「てよだわ」言葉いわゆる「女ことば」は、「ハイカラ娘」的イメージのものだったわけね。それがだんだん広まってきて、「女は女ことばをしゃべるものだ」、っていう固定観念が植え付けられた。


それが1970年代に、ハリウッド映画movieから「エイリアン」のリプリーに代表される“強い女”が登場した時、字幕はどうなったか?『1970年代の翻訳家は強い女の発言をほぼ機械的に女ことばに翻訳したのである。』と著者は書いている。しかしその後に続くのは『従来、ていねいで従順で女らしいイメージと結びついていた女ことばを、同じ女性だが、全く異なる人物に「ずらして」用いたのである。(中略)翻訳家の選択が、「女ことば」という言語資源が表現しうるアイデンティティの幅を広げたのである。』と書いている。“機械的な翻訳”と“翻訳家の選択”は矛盾してはいないのか?その次のページ(P190)では『女性のせりふを女ことばに翻訳する傾向は、各時代の社会状況や翻訳家のジェンダーや年齢にかかわらずに観察されるのである。これは、このような翻訳が個々の翻訳家の選択によって行われてきたのではなく、「女は女ことばを話している」という社会に流布している信念に従って行われた可能性が高いことを示している。


結局、翻訳家は、いつの時代でもなーんも考えずに、女がしゃべってりゃ女ことばに訳してるってことでしょーがannoy。で、実際、女ことばをしゃべる日本人の女は、よくて40代後半以上しかいなくて20代ではほぼゼロ(P24)。ってことは、翻訳の、日本人の今を生きる女性に与える影響はほぼゼロってコトなんぢゃないのー?わたくしの感覚から言えば、「女ことば」は、フィクションの中にしかない“フィクション語”とでもいうべきものだわね。だって、日本のテレビドラマでだって、よっぽどガサツな女でもない限り、女性はたいがい「女ことば」しゃべってるもんね。著者は、翻訳が日本語をつくってきたと主張してるけど、まぁ、ある時代まではそうだったんでしょーが、こと「女ことば」に関しては、もはや何の意味も持たない「女ことば」の再生産と、「女は女ことばをしゃべる」っていう「信念」を虚しく維持してるだけ、「フィクション」の中で化石化してるってわたくしなんかは思うけどthink


しかし、気になるのは、この言語学者の保守性。『いわゆる理想的な「あるべき」日本語、日本人女性が日本語を話している具体的な場面では表れにくい男女による明確な言葉づかいの区別は、翻訳の中の会話によって維持されている。』という部分や『私が一番驚いたのは、2011年12月から、JR東日本が展開した「行くぜ、東北。」というキャンペーンだ。(中略)しかし、同じキャンペーンのテレビCMを観て驚いた。CMの中で「行くぜ!東北!」と叫んでいたのが、若い女性だったからだ。』驚き過ぎだっつーの。固定観念に一番縛られてるのがこの筆者でしょgawk。誰がどんな言葉を使ったって勝手だッsign01おーッrocksign01


ってなことで、もー全然納得できないng展開のこの本。何より信用できないッangrysign01って思った原因は、わたくしの敬愛するheart02大傑作マンガ「ベルサイユのばら」に言及したこの部分。『宮殿の舞踏会で自分の母親を「かあさん」と呼んだ別の少女(実は、ジャンヌの妹のロザリン)は、(後略)』(P161)。誰だよ、ロザリンってannoyannoyannoy

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