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2017/01/15

「讃歌」

讃歌 (朝日文庫)

クラシック音楽を聴くのが好きなわたくしにとっては、普段から考えていることを小説にしてもらったような作品。さすが、篠田さんshine。2006年刊の篠田節子さんの長編book


テレビ制作会社で働く小野は、ある日耳にしたヴィオラ奏者の演奏に魂を揺さぶられ、番組制作を決意する。天才少女の栄光と挫折を追ったドキュメンタリーは好評を博し、園子も一躍スターになるが…(後略)。』(Amazon内容紹介より)って内容。


これは、今でも大人気を誇っている女性ピアニストが、テレビのドキュメンタリーによって脚光をthunder浴びた後に書かれたもののようだけど、今だと別の事件も脳裏に浮かんじゃうflair日本人は、クラシック音楽を“どのように聴いているのか”“何に感動するのか”という奥深ーい問題を取り扱ってるわけですthink


若い頃の栄光と挫折という経験”“長年の闘病生活からの復活”“本当は拙い技術”“大衆が感動する演奏”。これが小説に登場するヴィオリスト、園子のキーワードなんだけど、「プロが聴けばまともな演奏ではないにも関わらず、これまでの苦しかった経験は園子の演奏に現れ、大衆は感動する」、これらは否定されるべきものなのか、そうではないのか。筆者がそのどちらかに肩入れしている、という風にはわたくしには読み取れなかったのよねぇthink。主人公の小野が最後まで、自分の感動を完全には否定し切れないところにそれが現れてると思うのよ。


わたくしも、どちらとも言えないのではないかと思っていてtyphoon。そもそも西洋音楽であるクラシック音楽は、他の芸術ジャンル同様、ベースとなる宗教と哲学を血肉としていない異邦人には根本的には理解し得ないものだと思うdespair。ってゆーのがわたくしにとっての大前提なんだけども、そこまで行けなくても、「個人的に楽しむ」ことはできるわけで、その「個人の楽しみ」にはどんな基準があってもそれは自由なんじゃないかthink。クラシック音楽が“浪花節みたい”なスピリットと物語性で演奏されて、それに感動する人がいても別にいーんぢゃないの、と。まぁ本来の意味での“クラシック音楽鑑賞”からは別の次元であるのは確かだけどもねcoldsweats01。わたくし自身は、時代や作品の背景やらを知りたがる方なので、それだけで終わるのはツマンナイなーと思ってるんだけどもclover


あくまでもきちんとした技術があって、自分の考えを100%表現することができるならば、おそらく演奏にはその演奏家の経験に基づく人格が反映されるのは確実だと思うのよね、わたくしも。でも劇的な経験や障害が、その演奏を聴く前提であってはならないと思う。先入観があってはならないng。だから、最初に先入観なく演奏を聴いて、魂が震えるような感動をした主人公は、その感覚を疑う必要はないと思うのよ。それは決して「レベルが低い」ということではない、そういう種類の問題ではない、とわたくしは思う。不幸だったのは、彼がテレビ制作会社の人間で、その主観でドキュメンタリーを作ってしまったこと。影響力の大きいメディアで聴衆に先入観を与えてしまったこと。


それとわたくしがいつも疑問に思うのは、「権威」は絶対なのか、ということ。園子の演奏にあれほどまでに感動していた聴衆が、園子の留学先の音楽院の指導教授から否定されたのをキッカケに猛バッシングimpactに走る。もっと自分の感覚を信じてもいいと思うけどねぇgawk。「権威」はそれとして敬意を払うべきものだと思うけれど、自分の考えを蹴り飛ばしてfootimpactdashまで帰依することもないでしょうにwobbly


この小説では、園子は周りの男達を利用して再び脚光を浴びることに成功したけれど、「その自分の姿」に満足することが出来ず、しかしその限界を越えることも出来ず、結局は絶望して自ら命を絶ってしまう。演奏家としてはある意味「誠意」があったと言えるのかも知れない。


でもやっぱり、芸術を作り出すのも享受するのも人間である以上、ドラマ性を無視することは難しいワ~~bearing。だからこそ、マスメディアの使い方、受け止め方、どちらも細心の注意が必要ってコトですねthink

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コメント

ごぶさたしております。
篠田さんの小説とてもおもしろそうですね。今度読んでみます。教えていただきありがとうございます。

投稿: MUUSAN | 2017/01/16 12時28分

MUUSANさまsun

お久しぶりですーhappy02sign01

はい、これ、MUUSANさんにもお読みいただいてぜひ感想を聞かせていただきたいですconfident。その時にはぜひトラバをhappy01sign01

これを書いた後に出版社のサイトで篠田さんがこの作品について語っているのを見つけたのですが、篠田さんご自身はやはり、クラシックの「浪花節」に感動するのには懐疑的なお考えのようですねflair

投稿: かまど姫 | 2017/01/17 20時16分

 調べて見ましたらこの本、今は絶版なんですね。中古を調べると文庫だとなかなかいいお値段がします。すぐの購入には踏み切らないかもしれないです。電子書籍でも見当たらないし……

投稿: MUUSAN | 2017/01/18 08時25分

ほんとですねー。まだ文庫になって6年しか経ってないのに…。こんなに中古価格が高いなら重版かけてもよさそうな気がしますけどね。

後は図書館でしょうか。今検索してみたら札幌の図書館にはありましたから、MUUSANさんのお住まいの所にもあるかも知れません。MUUSAN さんは、今、札幌ご在住ではないんですもんね?

最後の手段で、私のをお譲りしますよ(笑)。

投稿: かまど姫 | 2017/01/19 01時18分

 いまはミャーミャーの国・名古屋です。
 ツタヤあたりなら、あまりモノの価値にとらわれてないようなので(?)安く出てるかもしれないです。気長に探してみますね。

投稿: MUUSAN | 2017/01/19 05時50分

わー、名古屋sign01いいなぁ~heart02。ドアラに会い放題ですねhappy02、って、MUUSANさんはご興味ありませんねcoldsweats01

はい、MUUSANさんが見つけ出されるのを気長にお待ちしてますsign01

投稿: かまど姫 | 2017/01/19 22時18分

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