カテゴリー「書籍・雑誌」の376件の記事

2017/11/29

「獣の奏者」1~4巻

まさしくハイ・ファンタジーの王道crownsign01ウワサには聞いていたearpaper上橋菜穂子さんshine、初めてその作品を読んでみたらば、そのガッチリと緻密diamondに構成された世界観に感服いたしましたーfujishine


テーマは、人間とその他の生き物との関係、人間の欲望、戦争などなど。優れたファンタジーは現代を生きるわたくしたちにも、考えるための多くの示唆flairを与えてくれるものですconfident


物語の最初は、雨降る深夜rainに、主人公エリンのお母さんが、獣ノ医術師として「闘蛇」の様子を診に行き、家にそっと戻ってくるシーンから始まる。雨の夜、この、圧倒的に暗くて冷たく湿った感じからの幕開きがなんともわたくし好みcatfaceで、すでに最初からガチッimpactrockと掴まれてたのよねーhappy01


エリンのお母さんが、闘蛇衆の獣ノ医術師として失策を犯してしまった罰で、「闘蛇」に食い殺されてしまうシーンcoldsweats02や、エリンちゃんが育てた王獣リランが初めて闘蛇と闘うthunderシーン、ラストのガチバトルimpactなど、大人が読んでも震え上がるほどの残酷で恐ろしい情景なんだけどshock、上橋さんの筆致は、実に平易で激しいところがない。子供でも読める易しい、穏やかな教養を感じさせる文章でありながら、この戦慄すべき場面bombをものすごい迫力脳裏に喚起させる作家には、わたくしこれまで出会ったことがないsign01本当にビックリだワーcoldsweats02impact


取った人間に決して懐くことがない王獣との間に意思の疎通まで可能にしてしまったエリン。これは、彼女の飽くなき好奇心と探究心searchから自ら学び取ったpencil技のお陰なんだけど、師匠であるエサル師から『すべての生き物が共通して持っている感情は<愛情>ではない。<恐怖>よ。』と言われる。物語の中でもエリンとリランの人間っぽい感情の交感があって、わたくしたち読者もなんとなく甘い心地好さspaにシバシ浸ってしまうのだけど、上橋さんはそんな“スウィートな幻想”をコッパミジンに打ち砕くthunderpunchbomb。そーよねー。んなワケないわよねーweep。そんなキビしさthunderを何度もこれでもか、これでもかと描いた末のラスト・シーンend。ヤバ過ぎるbell。「すべての生き物が共通して持っている感情は<恐怖>」かもしれないけど、親子の<情愛>もやっぱりあるのではないか、ってことが描かれてるのよねーconfident。このシーンを地下鉄subwayの中で読んでたんだけど、思わず目がシバシバシバシバ…weep


もうひとつ、わたくし、おぉ…と思った部分がありました。王獣を操れるということがバレた後、リョザ神王国の人間に王獣を使って王国を守るよう告げられた時、エリンはこう考える。『(王獣で闘蛇を制御する。音無し笛で、王獣を制御するように…。)なるほど、人という生き物は、こういうふうに思考するのだな』と。これ、まさしく、戦争の武器bombの話。核兵器を始め強力な軍備を持つことによって相手を威嚇し、制御しようとする思考danger。賢明なる王国の王は闘いを避け、融和の道cloverを選ぼうとするんだけど……。



ここまでの展開では、王国のかたちにまとまりが着かないまま終わってしまっているので、この「武器問題」や、「歴史は繰り返される問題」(王獣と闘蛇が武器として使われ、国が滅びたという)がどのように昇華されるのか、続きが気になるところ。


そして実はもうひとつ、わたくし、すっごく感銘upを受けた一文があったのよね~happy01。リョザ神王国はどうやら代々女性noteがトップになるようなんだけど、この物語では「女王」ではなく「」と記述されているのが、すっごく嬉しくてhappy01。先代の真王(ヨジェ)、ハルミヤが難しい問題に決断を下す場面で『彼女は王であった。』ジェンダーフリーのお手本ッfujisign01カックイーッimpacthappy02sign03


そして面白かったのは、カザルム学舎schoolでのエリンの親友、いつも前向きで陽気sunなユーヤンribbon。彼女には訛りがあるってゆー設定なんだけど、それが“関西弁”。エリンやユーヤンがしゃべってる言葉は日本語ぢゃないと思うんだけど、“関西弁”。いいワ~~smilesmile


ということで、続編に突入しますdashsign01

 

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2017/11/04

「ハイジが生まれた日」

ハイジが生まれた日――テレビアニメの金字塔を築いた人々

これ、読んでると今すぐ「ハイジ」のビデオcdを見たくなっちゃう~catface。長年、アニメ作品「アルプスの少女ハイジ」について関係者の話を採取してきたmemopencilちばかおり氏の著作book。サブタイトル「テレビアニメの金字塔を築いた人々」。



わたくし自身は、もちろんこの作品のことは知ってるし、再放送などでチラと見てた記憶はあるけどcoldsweats01、これほどまでに大切に大切にheart02作られて来た作品だとは知らなかったし、まして、著者のように、子供ながらに作品の底に大人たちの本気を感じた、ってほど感受性も高くないボヤッtyphoonとしたガキンチョだったのでsmile、逆に、大人になった今、この本に出会えて良かったワhappy01。改めて「ハイジ」を見る目が変わるもんねbell


しかし、それだけ熱心に取材しているようなのに、残念ながら“産みの親”・高橋茂人氏についてあまり深く掘り下げて書かれてる印象がないのよねーthink。生い立ちから記述してきたのに、「ハイジ」を制作している途中から、現場との間に距離を置いた高橋氏の真意についてはツッコミ甘しcake


あとがきで著者が書いているように、今だとまさに労働環境はブラックのようだし、これが今に繋がるアニメ制作業界に繋がる“悪しき伝統”の起源になってしまってる感があるとしたら、皮肉なことよねぇdespair


どこの世界でも一緒なことだけど、“クオリティの高い仕事をする人たちcrownshineにはそれ相応の待遇と対価が与えられる世の中であって欲しいものです…think

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2017/10/14

「三鬼 三島屋変調百物語四之続」

三鬼 三島屋変調百物語四之続

今回は、「軽」cloudの巻ですね~。楽しくてカワイイお話もありました~happy01。宮部みゆきさんの三島屋シリーズ第4弾。今巻も、「不思議な現象はヒトの心が生み出すもの」というテーマがハッキリ現れてましたーbell


第一話「迷いの旅籠」。はーdash、なんとも切ない話だったワーweep。誰もが願う、亡くなった愛しい人との再会をテーマにしたもの。クライマックスでの切なさには胸が締め付けられる。“あの世”へと貫太郎が足を踏み出してしまうシーンでは、「あー、やっぱりそー来るかー…」と感じつつ思わずウルウル…weep。でも物語の最後、もしかするとあれは“あの世”への入口ではなかったかも、というほんのちょっぴり希望を抱かせる閉じ方がなんとも秀逸diamond


第二話「食客ひだる神」。めちゃめちゃカワユイお話catface。怪異だけど可愛い。なんちゃってbleah。途中からこのひだる神ちゃんとコミュニケートonできるようになってからが楽しくてたまんないのhappy02。“生意気にもシブシブうんうん”するなんてラブリィ過ぎでしょーーッheart02happy02sign01このあたり宮部さんのお得意の描写よねーhappy01。あざといけどマンマとツボるわたくしcoldsweats01。あやかしと、心優しい弁当屋夫婦との心温まるファンタジーheart01。って書くとものすごい違和感だけどsmile、それを達成しちゃうのが宮部流crown


第三話「三鬼」。今巻一番へヴィbombな話。貧しい寒村の厳しい暮らしが人心を荒廃させ、非人間的な行為にも感覚が麻痺していく恐ろしさが描かれてますshock。そんな中、語り手としてやってくる元江戸家老spade真っ当な人間性武士の矜持とを感じさせて、なんとも複雑な心持ちになる作品でしたthink


第四話「おくらさま」。この巻最終話は、理不尽な「家の守り神」を昇華させる悲しいお話が、今を生きるおちかちゃんとその周りに新しい風を吹き込んでくれる後味のいい一篇cute。新キャラnewとしていとこの“小旦那”富次郎clubと貸本屋の若旦那「瓢箪古堂」の勘一chickが登場。ふたりともこれまたとーぉってもイイ味出してんのよねーcatface。深い傷を負ったおちかちゃんの心にほのかに灯った青野先生への恋心heart02を、おちかちゃん自身の決意として、成就させるのではなく次の段階upwardrightへのステップとしたところが、なんともオトナで余韻のある宮部さんならではの演出でしたconfidentheart02。ほんと、これからのおちかちゃんの成長が楽しみです。富次郎と勘一とのカラミもきっと期待に違わぬものを繰り出してくれるでしょうgood


あー、ますます楽しみになってくる第5巻、発刊はいつかな~~happy01

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2017/08/23

「しぐさで読む美術史」

しぐさで読む美術史 (ちくま文庫)

う~むdespair、いくら一般向けとはいえ、ちくま文庫の割に「読む」ってほどでもない内容でちょっとガッカリ…down。神戸大学大学院人文学研究科教授、美術史家の宮下規久朗氏著book


「走る」とか「踊る」とか、ある“しぐさ”を表題として、そのテーマに合った絵を紹介していくってゆー流れなんだけど、ただそれだけ。「こんな絵がある。それからこんなのとか。」ってカンジ。具体的にそれが何を意味しているのか、といったような深い内容はほとんとナシempty。ぶっちゃけ、ふ~~んgawk、で終わりend


たとえば「肩を組む」の章。「われはアルカディアにもあり」というテーマについて、『アルカディアはギリシャの不毛の土地にすぎないが、ルネサンスの詩人サンナザーロが美しい自然に囲まれた理想郷として詠ったことで、文学や美術のテーマとして流行する。しかし、そんな理想郷にも「死」はいるのだという警告が、 「われはアルカディアにもいる」という死神の発した言葉であった。グエルチーノらによって、墓廟の上に髑髏があり、その下にこの銘が記されている画面が描かれた。しかし、十七世紀フランスの画家プッサンの同主題の作品では、髑髏は姿を消し、碑文の前で羊飼いたちが考え込んでいる情景となり、過去を懐かしむような叙情的な雰囲気を漂わせている。この絵が有名になったことによって、この格言は、過去を懐かしむ者が、私もまたこの理想郷にいたのだと回顧する意味に変わってしまった。』とある。ここで、プッサンはなぜこのような「意味付けの変換」を行ったのか、知りたいところだけど、それについては何も教えてくれないのよねーdespairtyphoon


ただ、著名な画家でもよっぽどのファンでもない限り、知られざる作品なんかを紹介してくれてるところはちょっとばかし面白いけどもgood


あとは、言われてみればなるほど、な記述がいくつか。たとえば『日本や中国では、日常の食事の場面だけを取り上げて表現することはほとんどなく、西洋に特有の現象であった。』とか。だけど『その理由については、拙著「食べる西洋美術史」を見ていただくとして』だってsweat02。もひとつ「おんぶ」の章。『(人をおぶう行為は)連れ去り、救出、いわば効率を求めた緊急の行為であり、西洋では、おんぶはスキンシップや愛情表現とは見なしにくいのかもしれない。』『日本では恋愛譚にもおんぶが登場する。美術でよく見られるのは、『伊勢物語』の「芥川」の段である。男が長年手の届かなかった深窓の女性を夜に背負い出して駆け落ちする。伝俵屋宗達の絵では、男におぶさった女と男が見つめ合っており、二人の愛情が伝わってくる。』そうね~~confident、わたくし、ここを読んでてタカラヅカの不朽の名作crown「花の業平-忍ぶの乱れ-」を思い出したワ~lovely。ゆり(星奈優里)ちゃん扮する藤原高子ribbonを負ぶうノル(稔幸)さん扮する在原業平drama。あーーー、ホントにステキだったワーーーーーheart04heart04heart04。は、置いといてcoldsweats01


その他、へー、そんな絵があるんだーってビックリcoldsweats02したのは「飲む」の章。『フランスのクレルヴォーに修道院を建てたベルナルドゥスは、教会で聖母像に祈っているとき、聖母の胸から乳がほとばしり、口に入るという幻視を体験したとされる。この主題はスペインで好まれ、聖母像から乳が噴き出して聖人の口に飛んでいくさまが描かれる。カーノの絵では、聖人は恍惚として両手を広げる祈りのポーズをとっている。』ほんとに、聖母の片方のオッパイからピューッsign05とかなりの勢いdashで放物線を描いて、聖人の開けた口にチチが注入されてる。コレ、笑っちゃいけないのよねsmile


あ、あと、個人的に如何なものかと思ったのは「あとがき」。あまり不人情なことは言いたくないけど、その内容があまりにも著者の個人的心境が綴られたものだったので、ちょっとヒイてしまった。ブログなどならともかく、お金を出して買っている読者に(不可避的に)読ませるべきではないと思うんだけど…。


とまぁこんなカンジで、それほど勉強になったとは言えないbleah本作の中、ひとつわたくし気に入った部分がありまして。「沈黙」の章。『アンニーバレ・カラッチの作品では、眠っているイエスが起きないように、聖母が幼い洗礼者ヨハネに対してこのしぐさ(口に人差し指を当てる)をしている。「赤ちゃんプニプニしてるね」とイエスの脚を触ろうとするヨハネを叱るのではなく、「めっ」と優しくそっと沈黙を促している。』カワイ~chickhappy01heart02


同じテーマのもの、次はガツンimpactとしたヤツを読みたいワ~sad

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2017/06/29

「フィッターXの異常な愛情」

フィッターXの異常な愛情

サクサク読めるライトノベルbook。ちょっとアニメみたいなカンジだったかなsmile?北海道出身の作家さん、蛭田亜紗子さん著sun


イケメン・ランジェリーフィッターである伊佐治のカンペキな仕事shineが顧客の心の癒しspaになるっていう面白い設定でgood、ハートウォーミングheart02な連作ものon。ヒロイン颯子ribbonがいろんなシチュエーションで変わっていく様子や、彼女の周りの女性たちが伊佐治の仕事によって生き返っていくようなのが楽しいhappy01。文章も、所々プッdeliciousdashとくるような意外性flairのある語彙を選択していたりして、センスの良さを感じますねーshine


ただ、最終章の超特急bullettraindashの展開にちょっとついて行きにくかったbearingのと、ラストがあまりにも予定調和で、大人が鑑賞するには物足りなさを感じさせるかな?まあ、あの最終章の流れだとこうならざるを得ないか…despair。オトナなわたくしwineとしては、もっと深みのあるラストにするテもあるな~、なんて思うわけですcatface。 それとタイトルがちょっと奇を衒いすぎthink。まぁ「異常」といえば「異常」だけど、内容のテイストからは若干ズレてるカンジもする。佳い内容だっただけに、いろいろ要求しちゃいますcoldsweats01


著者が元広告代理店勤務だけあって、その辺りの描写もリアルで楽しめましたnotesmile

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2017/06/21

「猿の見る夢」

猿の見る夢

あらー桐野さん、作風変わったsmile?でも流石の筆力penですごーく面白かったーhappy01。桐野夏生さんの長編小説book



わたくしの中では、「OUT 」の印象(古ッsweat02)がめちゃ強いので、桐野さんって異様にハードボイルドspadeなイメージなんだけど、このカルーくてエンターテインメント性の高い書法が、作品のテーマとリンクして効果的なのよねーgood。つまり、30年前に「バブル」で踊りまくったカルーい人間の成れの果てっつーか、その価値観の究極を描くのに、この書法がピッタリだったってことなのねsmile



それにしても主人公、薄井さん、名前の通り笑えるくらいめっちゃ「薄ーい」人物smile。女kissmarkと金yenと常務(あわよくば社長crown)になることだけで頭がいっぱいfull。このあたりを描く桐野さんの筆penの楽しそうなことといったらsmilesign01ここまで突き抜けてると逆に愉快なのよねーsmile。バブルの典型を生きてる男で、価値観の基本は金yenと権力rock。意識的にも無意識にも全ての物事を調子よく「」との収支で換算している。だけどこんなバカ、実際にはいねぇよな~gawkなどと思ってたら、感想ブログpcなんかを見てると「身に詰まされる」とか「思い当たる」とか意外とあって、驚愕したcoldsweats02


定年を目前に、一応それなりに順調だった彼の生活に突如thunder、影shadowが差しちゃう。それが、長峰という「夢見予言者」のオバサンtyphoon。「既得権益者」(このレッテル貼りも薄井によるもの)である妻が連れ込んだ胡散臭い人物なんだけど、ここからふいにプチホラーの様相を呈してくるのも面白いのよねーsmile。このまま本物のホラーになっても面白かったかもhappy01。ま、ラストはある意味ホラーかshock



この長峰さんの「予言」に対する対価yenを払うことを惜しんだばかりに、彼は最終的にはそれまで「」のようなアサヂエ身のこなしで死守してきたものを全て失うことになっちゃうという、現代の寓話、…だったのかflair。今気づいたsmile。せっかく長峰さんが日光の三猿の逸話を教えてくれたのにねーrain。長峰さんの「予言」がなくてもいずれは破綻するだろうな~とは思うけど。



もし、薄井が長峰さんの信奉者になってたらどうかしら?長峰さんのアドバイスに従って、薄井がどんなセコい手を使ってサバイバルimpactするのか見てみたかったワー。きっと爆笑ものだったに違いなしhappy02。あるいは、最後の方で薄井は、長峰さんに一緒に組まないかとプロポーザルを受けるんだけど、ここでそれを受けてアウトローの道を突っ走ったらrun、これまで通りのハードボイルドになったかしらsmile



などと色々考えると、いろんなパロディも出来そうな、主人公・薄井とは真逆leftrightの「厚い」作品だったわねーsmile

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2017/06/08

「インドクリスタル」

インドクリスタル

さすが、わたくしお気に入りheart04篠田節子さんの長編小説book、クライマックスの怒涛度waveはそれほどないけどbleah、「重み」がパネェ~~bomb。541ページ2段組、へヴィな内容なのにスルスルと読める驚異のリーダビリティは相変わらず~bell


最先端技術を使った事業のために必要不可欠な水晶を求めてたどり着いたインドの奥地。そこは、現代日本人の想像を遥かに超える魑魅魍魎の世界だった…と。物語が劇的に動くのが、後半も後半、残り4分の1くらいで、それまでが主人公・藤岡のビジネス上の困難が繰り返し描かれ、それも半ば予想させるような展開なのでやや単調なカンジはするけど、それでも「読ませる」手腕は素晴らしいのですわshine



インドという国の、社会的、宗教的、政治的な複雑性を描いたものなんだけど、「平和ボケ」してるわたくしにはほとんど理解不能な世界だったweep。構想10年ってことだけど、そこに、俄に日本人の関心事ナンバーワンになったけどこれまた急速に風化してる放射性物質汚染の問題も絡めて、さすがの構成力なのよねーgood


インドという国の、安易な理解を拒む複雑性の象徴にも見えるヒロインribbon・ロサと、日本人らしい浅薄なヒューマニズムをどこまでも発揮してしまう藤岡とは、恐らく永遠に、そして真に理解し合うことはないだろうと思うと、ラストに流れる奇妙な楽観的空気にも拘らず、ってゆーか、それゆえに、と言うべきか、やはり深い虚しさばかりが残っちゃって。



何重にもハンデ
を背負った先住民の女性が特異な能力を持っていて、西洋的な高等教育pencilを受けたらどうなるか、というある意味ファンタジックなヒロイン像になってるロサ。ここで示される彼女の生き方は、作者の創作だしひとつのモデルに過ぎない。けれど、藤岡の申し出を取捨選択する彼女の姿勢は、一方的に西洋的価値観を一国に押し付けることの無意味さを物語ってもいる。恐らくロサのような出自と来歴を持つネイティブたちが合理的な知性と知識を持って、底辺から国を変えていくのが有り得べき形なんだろーなーと思うけども、現実にはどうなんでしょうね…typhoon


それにしても、インドという国の底知れぬキャパシティに、恐れすら抱いてしまうのは、決して大袈裟じゃないわよねthink

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2017/06/04

「謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』」

謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』 (角川oneテーマ21)

はぁぁ~~、またもや目からウロコパラパラ~~diamondwobbly。やっぱ、たまにこーゆー本も読まなきゃ、アタマ悪くなる一方だワ~coldsweats01。イタリア文学者、東京大学大学院総合文化研究科准教授、村松真理子氏著book


まず、「詩」というものがニガテなわたくしにはハッcoldsweats02sign01とする事実。この「神曲」という作品自体が、「三位一体」の構造を成しているということ。全部で100篇の詩(カント)が、3パート(=カンティカ、つまり、「地獄」「煉獄」「天国」)で構成されており、100篇の詩は1(イントロ)+33編の『地獄篇』+33編の『煉獄篇』+33編の『天国篇』で成り立っている、この数字の組み合わせは「死後の世界」の構造を現しており、中世人にとっては意味深いものなのだそう。すなわち「唯一なる神への信仰と『救済』への道&「100」=丸い数=完全」、ということなのだと。うーtyphoon。奥深すぎるwobbly。そしてそれぞれのカンティカにおいて、3行ごとのまとまりが三段論法のように主人公の旅のステップを物語り、1行目と3行目で脚韻を踏んでいる。この「三行詩」の形式はキリストが死の3日後に甦る、ということと対応している。さらに1行は11音節から成り、11(音節)×3(行)=33音節で、ここでも「三位一体」が表現されている。『3行のひとまとまりが三つ重なった冒頭9行で、作品の発端と作者の意図が語られる。このまとまりが、それぞれの行の11音節と1行ごとの脚韻がつくるリズムを保ちながらずっと最後まで連ねられていく。』ことが『中世ゴシックの大伽藍に喩えられる壮大なことばによる構築物』と言われる由縁なのだとcoldsweats02。スゴすぎ~~~~~coldsweats02coldsweats02coldsweats02


この、ダンテが編み出した心地よいリズムnoteを作る技巧や形式が、700年以上に亘ってうたい継がれるための「記憶」を助け、長いテキストmemoを書き写すときの間違いや改変を起こしにくいようにする要因なのだと。なるほど~~shineconfident。この「神曲」って、イタリア語を話す人々にとってはその90%が理解可能な語彙で成り立ってるらしく、それが直接心に響くheart02のだそう。それを考えると、日本の古典は読めないもんね~~bearing


で、ダンテはなぜこの作品を書いたのかという理由がまたフルってるのよねcatface宗教的世界観・倫理観が非常に重要な意味を持っていた中世文化において、彼は、聖書的な重層的で隠された真実を明らかにしていくべき意味の構造を、「私」を主人公とする物語が語られる「神曲」という、聖書でも聖人伝でもない世俗作品として再現しようとしたのだと。密教でいうところの仏像みたいなもんかしらcoldsweats01。難しい教義を誰でもわかるようにするものcute。ダンテは確かに、当時教養人の間で使われていたラテン語ではなく、世俗の言葉でこれを書き、それが現在のイタリア語の基となっていて、イタリアでは現在でも義務教育の間、中学でも高校でも大学の文学部でも必須科目となって、さんざん勉強させられるらしいpencil。ここで面白いのは、このダンテが記述した言葉が現在も通用する理由なのよね。ダンテの少し後の時代のペトラルカがダンテを称揚しup、ダンテが記述した言葉をオーソライズしたとこがベースにあって、『政治的に半島を統一する「宮廷」の不在が書物や文芸のことばである「書きことば」という共通語の重要性を高めてしまった。』『イタリア半島が政治的に分断されていた歴史的事情のために、比較的大きな変化を被ることなく、イタリア半島とイタリア語は近代を迎えてしまったのだ。』ということらしい。いや~ほんと~に面白いconfident。政治と文化、密着しておりますleftright


その「聖書的な重層的で隠された真実を明らかにしていくべき意味の構造」とは何か(う~、わかりにくい~~sweat01、というのがこの本のテーマなんだけど、これまた難しいdanger。①字義的なもの=“物語”の虚構のことば。まぁ、物語上のもの、そのものってことかな?②アレゴリー=宗教的・倫理的な「隠されたもの」③倫理的なもの=②のうえに倫理的価値を読み取る④アナゴジー=神秘的解釈、ということになるらしいんだけど、微妙過ぎて高度過ぎるしsad。なので、今も世界中で探求中searchであり、筆者もはっきりとは書いてはいないのよbearing。自分で考えなさいねーwink、ってことらしくwobbly。でもそんな13世紀のイタリア人の書く宗教観なんか、理解できるわけないっつーのpoutdash、ってことで、ここからは、いくつか具体的なエピソードを引き合いに出しながら解説を加えてくれてますpencil


まず地獄の門をくぐって最初のところは割と軽めの罪の人たちが集合してます。どんな人たちかっつーと、『生前自分の立場を決断できなかった死者たちの魂だ。彼らは地獄にも煉獄にも迎え入れられることなくそこにとどめおかれている。』彼らをダンテは『かつて真に生きたこともない禍いなる者ども』などと呼んでいるcoldsweats01。なんでこんなヒドい言い方すんのー?coldsweats02って思ったら、どうやら政争bombに巻き込まれてフィレンツェ追放endにまでなったりしたダンテの私怨typhoonから来てるらしくて、こんなところを知ると、ダンテちゃんも(いきなりちゃん付けbleahカワイイヤツやんけcatface。次のエピソードは「ウリッセ」。またの名を「オデュッセウス」という。知性を用いて人々を欺き(例のトロイの木馬ですナhorse)トロイアを滅した「罪」で地獄に落とされてます。『このウリッセの物語の問いは、人間は自らの知性に頼って好奇心とさらなる知の獲得への欲求にひたすらしたがうことが許されているのか、ということだ。つまり神への祈りや赦し、恵みに頼らないでいいのかが問題なのだ。』このあたり、極めて中世的宗教観が現れており、現代日本人のわたくしは「え?別にいーんぢゃないdespair?」とか思っちゃうけど。英雄であり、地獄の罪人であるという二重性は、二つに引き裂かれたダンテ自身のあり方を反映した分身なのではないかと筆者は書いてます。「地獄篇」からもう1エピソード、「ウゴリーノ伯」の物語。時代によって読まれ方が変わるという例。政治的な争いにより4人の息子共々牢獄に入れられたウゴリーノ伯。余りの飢えに苛まれ、息子たちが父に「わたしを食べてください」と言う。しかしそれを拒んでいるうちに息子たちは次々に死んでしまう。そして最後の一行がこれ。『その後、飢えが苦悩を越えた。』これをどう解釈するか。当然、父ウゴリーノ伯も死んでしまった、という解釈が普通だろうけど、カニバリズムを想起させる一行でもあるのよねshock。『これは、いずれにしても劇的な場面だ。ドラマチック。19世紀は演劇が「指導芸術」だった時代であり、ドラマチック、演劇的であることに非常に価値があった。(ドラクロワの作品とバイロンの作品、「神曲」の読みが)同じ時代の感性を通して並んでいる。


そして、天国に昇るために試練を与えられている「煉獄」を通っていよいよ「天国」へupwardright。「天国」ではヴェルギリウスからベアトリーチェへと引き継がれる、彼らとの「対話」によってダンテは未知の知識や情報を得ていくんだけど、その内容が「神学」や「科学」だってところが、ほぉぉぉ~~dashってカンジなのよねcatface。「月天」でベアトリーチェから「科学」と「神学」。「水星天」でローマ皇帝ユスティアヌスから「キリストの神性」「ローマ法の成文化」、ベアトリーチェから「キリストの磔刑と贖罪の意味と復活の真実」「魂の永遠性」、「金星天」でトルバドゥール詩人から「地上での愛欲が浄められた末に宇宙を動かす根源の「愛」にいかに純化されるか」、「太陽天」では聖トマスの魂から「聖フランチェスコの愛と清貧について」聖ボナベントゥーラから「聖ドメニコの生涯」聖トマスから「三位一体の奥義」を教わるという内容。スゲーーーーーcoldsweats02coldsweats02coldsweats02。『ダンテは昇りながら、上昇につれて美しさと輝きをますベアトリーチェと聖なる魂たち、いわば最高の教授陣によって、当時の知識としての「科学」と「神学」についての抗議を受けつづける。そこは光とともに、美しい音楽があふれる世界だ。』その後もいろんな「天」ステージで知識を授けられ、最後の「原動天」で世界の動きの源「天地創造」「天使たちの資質」「神の不可分性」などをベアトリーチェと「対話」でゲットするpencil。でもその中でも「土星天」で聖ベネディクトゥスから修道院の腐敗への批判と刷新の予言を聞くってあたりが当時の世相、特に教会への批判がなされていて、ダンテちゃんらしさを忘れてないわね、ってカンジcatface。天国篇のクライマックスはダンテの救済。『それは知の完成、すなわち神の姿を見ることだ。』もうこのあたりは神々しすぎてshineshineワケわからんtyphoon


まとめとしては『人間的なベアトリーチェの愛が壮大な世界観・死生観の様々なテーマを融合して「神曲」を支えている。ダンテはこの生涯の傑作において中世文化を、人々の語る新しいことば俗語による三行詩という画期的な形式の中で集大成し、百科全書的な知を有機的に、人間的に統合することに成功した』ということでしたdiamond。はー、やっぱり、スゴいimpactとしか言い様がないーsweat01。それも散文ならともかく、韻文でやり切るって、なんなのもーッimpactpoutsign01ってカンジよねーcoldsweats01


でも、これでほんの少し、ヨーロッパ文化spadeのベースを知ることができたんで、今後の絵画artや文学鑑賞bookにちょっとだけ役立つかも知れないワ~~up。って、原書(の翻訳モノ)に当たろうとしないところが、わたくし=ヘタレの面目躍如happy02。テヘヘbleah

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2017/02/15

「泣き童子 三島屋変調百物語参之続」

相変わらず、繊細な心持ちを映す宮部さんの言葉の選び方、フレーズの作り方、ウマいナ~~confidentheart04。宮部みゆきさん著book


わたくし、このシリーズ大好きなのに、最近第4巻が出るというのを知り、あれ、ってことは第3巻が出てたのねーsweat01と慌てて探したのでしたsearch。ヌカってたsweat02。わたくし、落語も怪談話もほとんど聞かない(最近NHKtvでやってた「落語the movie」はすっごく面白かったケドhappy02)のでよくはわからないんだけど、宮部さんの物語のストーリーテリングの巧みshineさにはほんとに感服いたしますねぇfuji


なかでも圧巻だったのが「まぐる笛」。これ、明らかに原発事故が影響してますよね。ネタ的には先住者と征服者の関係に端を発する悲しい話ではあるんだけど、とにかく“まぐる”の描写が迫真thunderimpact。お昼ご飯restaurantdeliciousを食べながら読んでることが多いんだけど、もー、食べ物を口に運ぶのを忘れちゃうくらいcoldsweats02。ちょっとゴジラも彷彿とさせて、その辺りも、原発事故を連想してしまうのだワthink。ただ、「“まぐる”という怪物は目に見えるだけまだまし、見えないもののほうが恐ろしい」と登場人物に言わせてしまったのはちょっとあからさまだったかなーdespair。いささか唐突なカンジもしたし。 この「まぐる笛」もそうだけど、ところどころ、なんとなーく「地方礼讚」的なニオヒが感じられたのよね。だけど、残念ながらそれはやっぱり都会に住んでる人の偽善性が漂っちゃってるbearing。おちかちゃんはイイコribbonだけど、まだまだだわねーsmile



作者曰く、奇数巻は重め、偶数巻は軽めの内容にするよう意識してる、ということで重めの奇数巻、第1巻でバトルimpactした「商人」とニアミスthunderしたので、奇数巻でいずれおちかちゃんの屈託が解放されるんだろーなー、ってわたくし予想するものでございますwink

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2017/02/08

「静かな黄昏の国」

静かな黄昏の国 (角川文庫)

ホントに篠田さんの作品は、短編でも深いぃぃ~~think。2002年初出、3.11後の2012年補遺、篠田節子さんの短編集book


15年前の作品なので、ものによってはディテール部で若干古いところはあるけど、どれも篠田さん独特のテイストがあって、わたくしの好きなジャンルであるファンタジックなバイオホラー、伝奇もの、社会派のSFチックなもの、と、読んでると背中がザワザワshockしてくるカンジがたまりませーんsmile。 圧巻なのは、タイトル作品「静かな黄昏の国」。福島の原発事故の前に、ここまでの作品が書けるってゆーのは、核心を正確に突いた取材力とそれをベースとした論理的な想像力から展開される驚異的な創造力の為せる技ですねーhappy02fuji


その「静かな黄昏の国」は、今となってはもはや単なるファンタジーとは言い切れない、薄ら寒い恐怖感を伴って、ラストは絶望感しか残らないというdown。篠田さんにしては珍しい読後感なんじゃないかしらthink。それほど、日本の原発施策に幻滅しているということなのか。


あとがきを読むと、篠田さんは昔から東電の原発関係のイベントや委員を経験されていたということがわかり、相手の懐に飛び込む取材をされているのね~と、いつも感じる作品内容のブ厚さに納得confident。やっぱ、作家ってスゴいdiamond

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